🌾 第2回 感じ取る力はどこから来たのか ── 日本人の繊細さのルーツをたどる

静かな朝、ふと耳を澄ますと、風の音や鳥の声の奥にある“気配”を感じることがあります。
そのわずかな変化に心が反応するのは、私たちの中に「感じ取る力」があるから。

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この力は、どこから生まれたのでしょうか。
それは最近の言葉ではなく、もっと昔――まだ文字もなかった頃から日本人の心の奥に流れてきた、“感性の記憶”なのかもしれません。

日本人の高い感受性とセロトニンの関係については、
別の記事「セロトニンとHSPの基礎知識(セロトニンの作用・HSP傾向)」でも詳しく解説しています。
https://serotonin-bliss.biz/blog/serotonin-hsp-intro/

日本の“感じ取る力”はどこから来たのか

【今日の要点】
・日本人の“繊細さ”は神話と文化の中で育まれた
・「和のこころ」は違いを感じ取り、調える力
・倭から和への変化は、静けさを誇りに変えた歴史
・HSP的繊細さとは異なる、文化としての感性

🌾 神話に流れる「心の物語」

古事記や日本書紀の神々は、人間味にあふれています。
天照大御神(あまてらすおおみかみ)は、弟の須佐之男命(すさのおのみこと)の乱暴なふるまいに心を痛め、岩戸にこもってしまいました。

世界が闇に包まれたとき、他の神々は力づくで扉を開けようとはせず、歌い、舞い、笑い合いながら、“明るさ”で心を開く方法を選びました。

やがて天照大御神が外に出て、世界に光が戻る――。
この物語には、「心が閉じると世界も暗くなる」「けれど、人のあたたかさがあれば光は戻る」というメッセージが込められています。

日本人が“感情”や“調和”を大切にするのは、こうした物語の中で、感情の繊細さを尊ぶ文化が脈々と受け継がれてきたからかもしれません。

🌿 聖徳太子が伝えた“和のこころ”

神話の時代に育まれた“感じ取る心”は、やがて人と人との関わりの中で“和を重んじる智慧”へと形を変えていきました。

聖徳太子は「和を以て貴しとなす」と説きました。
この“和”は、ただ仲良くするという意味ではなく、人の違いを感じ取りながら、全体を調えること。

自分の意見を通すより、相手の思いに静かに耳を傾けること。
それは簡単ではありませんが、だからこそ日本人は“聴く力”を磨き、言葉の奥にある気持ちを読み取る文化を育ててきたのです。

この「感じて、調える」という姿勢は、まるでセロトニンがやさしく働いている心の状態に似ています。
呼吸が整い、人との距離が心地よくなると、心も自然に穏やかさを取り戻していくのです。

🌾 外から見た「倭」、内に育った「和」

古代中国の史書には、日本列島の人々を「倭」と記した記録があります。
その文字には「おとなしい」「柔順」という意味がありました。

けれど、日本人はこの“倭”という呼び名を、やがて自ら「和」と書きかえました。
外から見れば“静かで控えめ”に映った気質を、内から見れば“調和とやわらぎの美徳”と捉え直したのです。

つまり、日本人はとても早い時期から、争わずに整える――という独自の感性を育てていた民族だったのかもしれません。

この「和」の思想は、のちに「大和(やまと)」という言葉となり、“日本そのもの”を象徴する心の在り方として広がっていきました。

🌿 自然とともに生きてきた感性

昔の日本では、自然は「生きる相手」そのものでした。
風の向きや海の匂い、空の色の変化――そうした小さな兆しを読み取ることが、日々を生きるための知恵でもありました。

だからこそ、言葉にしなくても感じ取る力が育ったのです。
「察する」という行為は、単なる気配りではなく、“生きるための感性”でした。

その積み重ねがまるでDNAのように刻まれ、現代の私たちにも受け継がれています。

現代の私たちに受け継がれた感性

💫 HSPと日本人の繊細さ ― 似ているけれど、違うもの

ここで少し整理しておきたいのは、“HSP(Highly Sensitive Person)”と“日本人の繊細さ”は似ているようで実は違うということです。

HSPは、生まれつき神経の感受性が高い「個人の特性」。
一方、日本人の繊細さは、自然や人との関わりの中で磨かれてきた「文化としての感性」。

どちらも「感じる力」ではありますが、ひとつは内から生まれ、もうひとつは外の世界との調和から育ちました。

この二つが重なり合うと、世界をより深く、よりやさしく感じ取る人になるのだと思います。

🌕 繊細な人ほど、この国を深く生きている

春の香り、夏の夜の音、秋の風の冷たさ、冬の静けさ。
その小さな変化を「きれいだな」と感じ取れること。
それは、この国の美しさを心の奥で受け取っているということ。

繊細に生きることは、生きづらさと紙一重。
けれど、その繊細さがあるからこそ、日本の“やさしさ”を誰よりも感じられるのだと思います。

🌙 そして、いま ― 整うための時間へ

現代は情報も刺激も多く、感じ取る力がオーバーワークになりがちです。
でも、それは壊れたのではなく、本来の自分に戻る時間を少し失っているだけ。

次回は、この「感じ取る力」をやさしく整えていく鍵として、“セロトニン”の働きを見つめていきます。

🌙 そして、いま ― 整うための時間へ
現代は情報も刺激も多く、感じ取る力がオーバーワークになりがちです。
でも、それは壊れたのではなく、本来の自分に戻る時間を少し失っているだけ。

▶ 第3回はこちら
🕊 第3回:繊細な国に生きる、繊細な人たちへ ── 日本のHSPが感じ取る「美しさ」と「生きにくさ」
日本の文化には、感じ取る力を大切にしてきた歴史があります。気配や感情を敏感に察してしまうHSP気質の人にとって、日本という繊細な国は生きづらさと美しさが共存する場所。なぜ敏感で疲れやすいのか、その背景を文化とセロトニンの視点からやさしく紐解きます。

▶ 次回予告:
第3回:「感じ取る力を整える ― セロトニンと日本人のこころ」
感じ取る力を穏やかに働かせるための鍵、“セロトニン”をやさしくひもときます。

執筆:一志多摩江(TAMAE)
ヘッドセラピー Calm time(多摩センター)代表/セロトニン活性アドバイザー
セロトニンが自然に働くリズムを取り戻し、
心と体が“凪”のように穏やかさを思い出す時間をお届けしています。
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── 今日もあなたの中に、穏やかな時間が流れますように。

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